デットファイナンスでの資金調達のメリットデメリット

起業時・事業拡大の際など企業の状況によって資金調達方法は異なってきます。数多くの資金調達の方法の中から最も最善な方法を見極める事は経営者にとって必要な力となります。本記事ではデットファイナンスに重点をおいた調達方法のまとめと、企業状況に合わせた最良の調達方法の選択の仕方を紹介します。現在行っている資金調達が適正なのか、他に可能な対策は有るかなど、あなたの状況に照らし合わせて読み進めてみて下さい。

資金調達の方法

資金調達の方法は大きく分けて2種類の方法があります。デットファイナンスエクイティファイナンスと呼ばれるものです。ここでは2つの資金調達の方法についてそのポイントを説明します。

・デットファイナンスとは

返済しなくてはならない資金調達方法のことです。「デット」は「負債」を意味し、ポイントとして貸借対照表上の負債の増加を伴い、調達先に対して支払利息が発生します。デットファイナンスの具体例としては金融機関からの借入や社債の発行などがあります。

・エクイティファイナンスとは

返済しなくてもよい資金調達方法のことです。「エクイティ」は「株式」を意味し、ポイントとして貸借対照表上の資本の増加を伴い、調達先に対する支払利息はありませんが、業績によっては配当金等の株主に対する収益還元が求められます。エクイティファイナンスの具体例としては自己株式の新規発行があります。

 

エクイティファイナンスでは新規発行した会社の株式を購入してくれる投資家を探さなくてはならないため、制約のある中小企業のファイナンスマネジメントではエクイティファイナンスではなく、デットファイナンスによる資金調達を検討される方が多い実情があります。

デットファイナンスでの資金調達のメリットデメリット

デットファイナンスのメリットとデメリットを、一部エクイティファイナンスと比較しながら解りやすく説明します。

・メリット

①経営権に影響がない

株式会社においては会社の重要な意思決定を経営者が勝手に決めることはできず、その行動に関する議案を株主総会という会議にかけて株主全員による多数決で決めます。多数決といっても一人一票ではなく、実際に所有している株数に応じて投票する権利(議決権)が与えられるため、多くの株式を持っている株主ほど経営に重要な影響を与えることができます。仮に総発行株式数の50%以上を保有していれば、多数決にて過半数を獲得できるため、理論上は会社の意思決定を自由に決められます。エクイティファイナンスでは自己株式を新規発行して資金調達を行うため、総発行株数が増加するに伴い、新たな大株主が現れた場合には、これまでの会社のパワーバランスが崩れることによって会社の経営が不安定になる恐れがあります。一方で、デットファイナンスによる資金調達は、そうした自己株式に関係のない金融機関等の外部関係者から行うものであるため、資金調達を行っても経営権に影響がなく、引き続き安定した経営を行うことができます。

②調達先の選択肢が多い

エクイティファイナンスでは調達先が投資家に限られるため、発行株式を購入してもらえる投資家を見つけないことには資金調達そのものができません。それに対して、デットファイナンスでは代表的な金融機関からの借入だけでも、銀行・信用金庫・政府系金融機関と多くの調達先があり、それぞれに審査基準があるため自社の経営状態に合わせて調達先を選択できます。

③節税効果がある

デットファイナンスでは資金調達に伴い支払利息が発生しますが、この支払利息は税金を計算する時に所得から差し引くことができます(損金計上)。そのため所得金額の減少に伴う節税効果が見込めます。

・デメリット

①返済期限がある

デットファイナンスでは、調達した資金に対して返済を行わなければなりません。仮に返済の延滞が続くと会社の信用を著しく低下させ、追加の資金調達が困難になる場合もありますので、自社の資金繰りと相談しながら余裕を持った返済計画を立てましょう。

②支払利息がかかる

最近では低金利傾向にある金融市場ですが、リスクの伴う事業性のファイナンスについては例外となります。節税メリットがあるからといって、事業に不要な資金調達を行うことは自社の資金繰りを圧迫させる原因につながるため避けましょう。

 

資金調達方法とベストなタイミング

デットファイナンスにはいくつかの資金調達方法がありますが、ここでは代表的な2つの方法について説明します。自社の必要理由と各資金調達の特徴を参考にして最適な資金調達方法を見極めてみてください。

 

A 金融機関からの借入(融資)

金融機関内部での審査によって資金調達の可否が分かれます。金融機関からの借入についてもいくつかの種類がありますので、各ポイントと併せて説明します。

①証書貸付

条件が定められた証書(契約書)を金融機関と交わして行う融資方法であり、主に返済期間が1年以上の場合に適用され、毎月均等に返済していく割賦返済方式となります。大きな金額であっても数年間に渡って計画的に返済していくことができるため、事業を行う上で経常的に発生する人件費等の諸経費支払に対する資金調達を検討している場面に適しています。

②手形貸付

金融機関を受取人とする約束手形を発行して行う融資方法であり、主に返済期間が1年未満の場合に適用され、支払期日に全額を一度に返済する一括返済方式となります。支払期日までは返済を行わなくて良いことから、証書貸付に比べてその間の資金繰りは楽になります。建設業や製造業のように作業工程が長く、仕事を受注してから実際に売上が入金されるまでの期間が長い場合、その間の資金調達を検討している場面に適しています。

③割引手形・ファクタリング

割引手形とは受取手形を金融機関に買い取ってもらうことで、受取手形の支払期日前に資金化を行う融資方法です。売上の回収が受取手形による場合、その支払期日は数ヶ月後に設定されていることが多いことから、その間の資金調達を検討している場面に適しています。

割引手形と似た融資方法で、ファクタリングと呼ばれるものがあります。その違いは買い取ってもらうものが、割引手形が受取手形に対してファクタリングでは売掛債権(売掛金や未収金・商品等)を対象としていることです。活用場面も基本的には同じになりますので、自社の回収条件によって使い分けて下さい。

④当座貸越

当座預金という預金口座を利用した一時的な融資方法になります。事業においては現金の他に小切手や手形による支払方法がありますが、小切手や手形についての引き落とし口座は当座預金に限定されています。

当座貸越とは、金融機関との契約で自社の預金を担保にして貸越限度額を設定し、仮に預金残高を超えて小切手や手形の支払があった場合に、そのマイナス部分を金融機関が貸越限度額まで立て替えて払ってくれるという融資方法になり、支払利息は預金残高がマイナスになっている間に対してかかります。

振り出した小切手や手形が預金残高不足の理由で引き落としできない場合、「不渡り」というレッテルを貼られて全金融機関に通知されてしまい、自社の信用を著しく低下させてしまいます。また、6カ月以内に2度の「不渡り」を行ってしまうと、融資をはじめとした金融機関取引のほとんどが制限されてしまいますので、商売上での小切手や手形のやり取りにはリスクも伴うということを認識する必要があります。日常的に小切手や手形のやり取りが多い会社の資金調達に適しています。

B 社債の発行・私募債の発行

社債とは、債券と呼ばれる借用書を投資家に購入してもらうことで行う資金調達方法です。自己株式の新規発行と似ていますが、異なる点は発行時に設定された返済日(償還期日)に一括返済しなくてはならないことと、毎年利払日に支払利息を払うことです。また、同じ一括返済である手形貸付の返済期間が1年未満であることに対して、社債では償還期日を数年先に設定することができることと、適用される金利が固定金利(適用後に金利が変動しないもの)であるため資金繰りが長期間安定するというメリットがあります。なお、社債の発行には厳しい基準や条件があるため、中小企業では私募債の発行がメインになります。

私募債とは、社債と同じしくみの資金調達方法ですが、不特定多数の投資家に対して購入をうながす社債に対して、私募債は50人以下の少人数投資家に対して行う資金調達になります。範囲がせばまる分、社債と比較して発行基準や条件が少ないため、発行しやすいメリットがあります。

デットファイナンス検討早見表

【自社の必要理由から見つける】

  • 毎月の仕入や諸経費の支払が足りない    ⇒   証書貸付
  • 受注から納品まで時間がかかる       ⇒   手形貸付
  • 売掛金や受取手形の資金化まで時間がかかる ⇒   割引手形
  • 商売で小切手や支払手形をよく使用する   ⇒   当座貸越
  • 資金繰りを長期間安定させたい       ⇒   社債・私募債発行

【各資金調達の特徴から見つける】

資金調達方法 返済年数 返済方法 メリット デメリット
証書貸付 1~7年 毎月分割 計画的に返済できる 長期のため延滞リスク高
手形貸付 1年未満 一括返済 返済まで資金繰り安定 返済年数が短い
割引手形 支払期日 支払期日 手続きが簡単 預金担保が必要
当座貸越 1年更新 1年更新 支払利息は使用分だけ 預金担保が必要
私募債発行 7年以上も可 一括返済 返済まで資金繰り安定 発行ルールが厳しい

 

デットファイナンスの代表的な2つの資金調達方法を説明しました。特に返済期限と返済方法については目立った特徴があるため、自社の経営状態に対して最善な資金調達を選択しましょう。

起業時の資金調達の選択肢

起業時においては信用や実績も乏しいためエクイティファイナンスに必要な投資家を見つけることが難しく、資金調達はデットファイナンスがほとんどです。デットファイナンスの中でも特に金融機関からの借入については、これから事業を始める方向けの融資が特別に設けられており、各行政機関と連携した起業サポートや支払利息や保証会社に対する保証料の金銭補助を行っています。融資審査には1ヵ月ほど時間がかかる点や書類作成等の手間がかかる点がデメリットですが、資金繰りを楽にする金銭補助のメリットは大きいかと思いますので、起業時の資金調達の選択肢として検討してみて下さい。

計画的なファイナンスマネジメントを

資金調達の方法をまとめて説明しましたが、共通して言えることは急な資金調達は良い結果を生まないということです。計画性のない資金調達は余分な借入負担や早期の追加資金調達など無駄な経営活動につながります。特にデットファイナンスでは長期間にわたって返済しなくてはならない場合が多く、延滞した場合のペナルティもあるため、今後の資金繰りについてよく考えながら、計画的なファイナンスマネジメント行うことが大切です。